Salesforceのリレーションマップとは?バイヤーリレーションマップの設定・使い方と実務運用
2026年8月時点のSalesforce公式ヘルプ・リリースノートの記載に基づいています。
Salesforceで顧客の組織を図にしたいとき、候補になる標準機能が「リレーションマップ」です。設定の有効化じたいは難しくありません。一方で、公式ヘルプには載っていないところでつまずく組織が少なくありません。誰をマップに置けるのか、線はどう決まるのか、そして更新を誰が担うのか。この記事では、機能の正確な範囲と設定手順を整理したうえで、実務で止まりやすいポイントと運用の組み立て方を解説します。
目次
Salesforceの「リレーションマップ」はどの機能を指すのか
「リレーションマップ」と呼ばれるものは、Salesforceの中に複数あります。まずここを整理しないと、ヘルプを読んでも自分の環境の話かどうか判別できません。
| 機能 | 提供開始 | 何をするか |
|---|---|---|
| バイヤーリレーションマップ | Summer '24 | 商談または取引先から開くマップ。取引先責任者を部署グループと職位レベルで整理し、組織ツリーとして表示する。本記事の主題 |
| アカウントプランのリレーションマップ表示 | Winter '25 | 取引先ごとの戦略ワークスペースであるアカウントプラン標準オブジェクトに、上記のマップを組み込んで表示するもの |
| 取引先責任者階層 | Summer '17 | 取引先責任者の「上司」項目に基づいて、上司と部下の階層を表示する。ヘルプでは「階層または組織図」と表現されている |
なお、日本語ヘルプでは同じ機能が記事によって「バイヤーリレーションシップマップ」「バイヤーリレーションマップ」と表記されています。機械翻訳による揺れで、指しているものは同じです。また、Quipにも「リレーションシップマップ ライブアプリケーション」がありますが、Quip自体の提供終了が公式に案内されているため、これから組む運用の土台には向きません。
バイヤーリレーションマップでできること
バイヤーリレーションマップは、取引先責任者に追加される3つの選択リスト項目を使って、組織のツリーを自動で描く機能です。
- 部署グループ:その人が属するビジネスユニットや部門
- 職位レベル:会社内での階層的な位置
- バイヤー属性(任意):商談・取引先に対する役割。Champion、Decision Maker、Detractorなどの値があり、Detractorは赤で強調される
職位レベルと部署グループの両方に値が入っている取引先責任者が、マップに自動的に表示されます。部署グループごとの列の中に、職位レベルの段が作られて配置される形です。インサイト機能が、情報の不足している主要関係者を提案してくれます。
対象エディションと前提条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| エディション | Enterprise / Performance / Unlimited(セールスに付属)/ Agentforce 1 Sales Edition |
| UI | Lightning Experience のみ。Salesforceモバイルアプリは非対応 |
| 対象レコード | 取引先責任者。個人取引先は非対応 |
| 表示上限 | 1つのマップに最大1,000件 |
| 表示ラベル | 部署グループと職位レベルの選択リスト値の表示ラベルは変更できない |
設定手順
- [設定]のクイック検索で「マップ」と入力し、[バイヤーリレーションマップ]を選択して有効化する
- 取引先責任者のページレイアウトや項目アクセス権を確認し、部署グループ・職位レベル・バイヤー属性を入力できる状態にする
- 商談または取引先のアクションメニューからマップを開き、サイドパネルの[欠落情報]から各取引先責任者に職位レベルと部署グループを割り当てる
マップ上でできる操作は、取引先責任者の追加と、サイドパネルでの項目の編集です。取引先のマップでは部署グループ配下のレベルの[+]から人を追加でき、商談のマップでは商談の取引先責任者の役割を追加してから割り当てます。
実務で止まりやすい4つのポイント
1. マップに置ける人が、そもそもCRMにいない
バイヤーリレーションマップに置けるのは、取引先責任者として登録済みの人物だけです。ここが実務では最初の壁になります。私たちは自社のプロダクトで、お客様の接点データを26万件ぶん見ています。その範囲では、メールのCcに登場した方のうち、CRMに登録されていたのは1.4%でした。商談に実際に関わっている人の大半が、マップを描く前の段階でSalesforceに存在しないのです。機能を有効化する前に、取引先責任者のデータをどう充実させるかの計画が要ります。
2. 線は項目の値から自動で決まる
マップ上の接続線は、部署グループと職位レベルの2項目から機械的に引かれます。誰と誰がどうつながっているかを営業が自分で定義する操作は、2026年8月時点のヘルプには用意されていません。「この人はこの人に効く」という営業が持っている感触は、この2項目には収まらないため、マップの外で管理することになります。
3. 表示ラベルを自社の職位体系に合わせられない
職位レベルと部署グループの選択リスト値の表示ラベルは変更できません。自社で使っている職位の呼び方と一致しない場合は、どの職位をどのレベルに割り当てるかの対応表を先に決めて、入力する全員に共有しておく必要があります。ここが曖昧なまま始めると、人によって割り当てがばらつき、マップの形が実態からずれていきます。
4. 更新の担い手を決めないと止まる
組織図は作った瞬間から古くなり始めます。異動や昇格をマップに反映する担当と頻度を決めていない組織では、有効化から数か月で実態と合わなくなるのが典型的な止まり方です。商談の定例レビューの中に「マップの更新」を組み込むなど、更新が個人の善意に依存しない形にすることが、この機能に限らず組織図運用の要点です。
標準機能で足りる場面と、パワーチャートが要る場面
登録済みの取引先責任者を部署と職位で整理し、誰がキーパーソンかをチームで共有する用途であれば、バイヤーリレーションマップで完結します。追加費用なしで使える標準機能なので、まずここから始めるのが自然です。
一方、パワーチャートとは、顧客の組織図の上に、誰が誰に影響を与えるかという力関係を描き足した、営業のための地図です。影響の向き、賛成・反対の立場、役職の上下と一致しない実質的な力関係。こうした情報は項目の値からは生成できないため、営業が自分で描き込む道具が必要になります。パワーチャートの定義と作り方はこちらの記事で詳しく解説しています。
両者は置き換えの関係ではありません。標準機能が「データから組織の形を自動で作る」側を受け持ち、パワーチャートが「営業にしか見えていない力学を書き残す」側を受け持つ、という分担です。弊社のPathLightは後者を担い、取引先責任者データから組織図とパワーチャートを自動生成して、描いた結果をSalesforceへ書き戻します。
よくある質問
リレーションマップとバイヤーリレーションマップは同じものですか?
同じ機能を指すことが多いです。日本語ヘルプでは同一機能が記事によって「バイヤーリレーションシップマップ」「バイヤーリレーションマップ」と表記されています。アカウントプラン(Winter '25)の画面に表示されるリレーションマップも、この機能を組み込んだものです。
マップ上で、人と人を自由に線でつなげますか?
2026年8月時点の公式ヘルプでは、線は取引先責任者の「部署グループ」と「職位レベル」の値から自動で引かれ、任意の2人を選んで関係を定義する操作は用意されていません。上司と部下の関係は、別機能の取引先責任者階層(上司項目に基づく)で表現できます。
マップには誰を置けますか?
取引先責任者として登録済みの人物です。職位レベルと部署グループの両方に値が入っている取引先責任者が自動的に表示されます。1つのマップに表示できるのは最大1,000件です。
どのエディションで使えますか?
Enterprise、Performance、Unlimited(セールスに付属)、Agentforce 1 Sales Editionで、Lightning Experienceのみの提供です。Salesforceモバイルアプリと個人取引先には対応していません。
パワーチャートとの違いは何ですか?
パワーチャートとは、顧客の組織図の上に、誰が誰に影響を与えるかという力関係を描き足した、営業のための地図です。バイヤーリレーションマップが項目の値から組織ツリーを自動生成するのに対し、パワーチャートは影響の向きや賛成・反対の立場を営業が自分で描き込みます。
まとめ
Salesforceのバイヤーリレーションマップは、取引先責任者の項目データから組織ツリーを自動で描く堅実な標準機能です。実務で効かせる鍵は、機能の設定よりもその手前と後ろにあります。置くべき人がCRMに入っているか。職位の割り当てルールが揃っているか。更新の担い手が決まっているか。この3つを整えたうえで、営業にしか見えていない力関係まで扱いたくなったら、パワーチャートの出番です。
PathLight:取引先責任者データから、組織図とパワーチャートを自動生成
描いた地図はSalesforceに書き戻され、取引先責任者レコードとして蓄積されます。AppExchangeセキュリティレビュー通過済み。
本記事は2026年8月時点のSalesforce公式ヘルプおよびリリースノートの記載に基づいています。機能・エディション構成は変更される場合があります。Salesforce、Sales Cloud、AppExchangeその他の名称は、Salesforce, Inc.の商標です。